つぶらな瞳の「ジョウビタキ」

野鳥は、ほとんどオスの方が艶やかな羽色をしていて、その美しい姿は、見ているだけで楽しくなる。メスはと言ったら地味の事この上なく、地味すぎて見つけるのも難しい茶色一色が多い。
 そんな地味な鳥ばかりのメスの中で、可愛いのがジョウビタキ。いや、メスの方が可愛いとさえ思っている。羽の優しい色合い、『つぶらな瞳』。枝に止まる姿も美しく、ピコン、ピコンと上下させる尾を見るとたまらなく愛しく思う。体長がスズメくらいの小ささという事も可愛らしさに味方している。
 野鳥の中では比較的住宅地に姿を見せる鳥だから、今まで何度か目にしてきたのに、気に入った写真が撮れないでいた。晴天で放射冷却の寒い朝。雪の上を歩けるのは今しかない!と、いつものリュックにオニギリ入れて今年初めて、山の中までジョウビタキに会いに行ってきた。
 日当たりの良い土手の雑木の前で待つこと数十分。「クックック」と、聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。いやん、可愛いんだから。
 2007/3/8付
「ヒガラ」の器用な食事

山の中で松ノ木を見つけ、狙いを定めて待っていると「チーチー」と、どこからともなく声が聞こえてくる。そして、いつの間にか松の木の枝には小さなヒガラが、ぶら下がったり、潜ったりしている。暖冬で小雪の今年、ヒガラは山から下りてきた。
 家の裏手には、神社への参道がある。その参道に杉や松が数本立っていて、そこに来るカラ類の可愛い声が、家の中に居る私の耳に聞こえてくるようになった。声を聞いて、慌ててカメラを持って飛び出すとヒガラの群れだった。
 参道のすぐ脇に立っている木だから、ほとんど目の高さでヒガラの器用な食事時を見ることが出来る。松ぼっくりに足をかけて、片足で松ぼっくりの奥を開くそれから、口ばしを中まで入れて、上手に種を銜える。
 時には、足だけで種を引っ張り出すことだってする。片足で種をつかんでは食べる。小さくて動きの早いヒガラを目で追うことは難しい。そんな落ち着きの無いヒガラ相手でも運が良ければ、可愛らしい姿を見ることが出来る。
 人間が一番不器用なのかも知れないな。
2007/2/18付
イラガに挑戦する「ヤマガラ」

暖ったかい日が続いているっていうのに、いつもの重ね着スタイルで”もっこもっこ”となった私は、更に背中と、お腹と、長靴にカイロを貼って、いつもの山に入った。
山に入って驚いた。日の当たる土手のところどころで土が出ている。嬉しいことに、お気に入りの場所も立てる分だけの乾いた土が出ている。
何か出てきてくれるかな?ワクワクしている私の頭上で「コンコンコンコン」大きな音がした。キツツキとは違う。何だ?上を見上げたら、真っ青の空が目いっぱいに広がった。その青空の逆光の中で黒く動く影が見える。その小さな影が動くのと一緒に「コンコンコンコン」と聞こえる。
 目を細めると見えてきた小さな影はヤマガラだった。ヤマガラが必死に枝を突付いている。枝の中に虫でも発見したのだろうと思った。なんと、ヤマガラはイラガの幼虫を狙って固い殻を突付いていたのだ。
 本当にイラガの殻は固い。頭を前後させて小さな卵型の殻を突付くヤマガラを見ているうちに私まで熱くなった。違う、厚着だったんだ。
2007/2/8付
「森の仲間」

昨年、雪山の中で見た10センチの足跡が、新たに付いていないかと出かけてみた。今現在小雪なんだから、もしかしたら入れるかも知れないと思ったのに、出かけてみたら、やっぱり十日町は雪国だった。
 雪は想像以上に積もっていた。80センチくらいだろうか。車から降り長靴で雪の上を颯爽と歩く…、はずだったのにカメラを担いで1歩「ずぼぼぼぼ」。潜ってしまった足を、やっとの思いで抜き、気を取り直して2歩「ずぼぼぼぼぼ」。ああ、長い足が欲しい。
 こりゃダメだわと、諦めて移動した先に見つけた足跡3種類。ウサギの足跡は、どこに行っても見ることが出来るけど、鮮明なキツネとテンの足跡は初確認。3種の足跡が狭い範囲で交差している。ここは山の動物達の通り道。しょっく!ウサギの跡は画面に入らなかったよぉ。(写真の直線歩きはテン、S字はキツネ)
2007/1/28付
平成十九年「元旦の月」

例年の事を思うと、十九年の幕開けのなんて過ごしやすかったことか。雪の無い新年を迎えられた事の幸せは、初詣に晴れ着姿を見られたことでも解る。
 のんびりと、正月気分を味わえる時間も無かった去年がまるで嘘の様。そのうえ、昨年の豪雪を詫びるかのように更に素晴らしいものを神様は届けてくれた。
 皆様の中にも、美しい空を仰いで感激した方が居らっしゃったことと思いますが…。ピーンッと張り詰めたように澄み切った夕刻の群青の空、頬に当たる痛いほどの冷気、音も無く静かに流れる時間の中に、月を見た。
 息を呑み月からの優しい光をしばらく受け止めていた。この美しい月を見ることが出来るのは、雪国の特権。半年近く雪と共に生きていかなければならない雪国への天からのプレゼント。ファインダーを覗きながら、思わずウサギを探していた私だった。
2007/1/18

葉が落ちた林に「ミソサザイ」

雪が降り、いよいよ山歩きが出来なってしまったと寂しく思ったのが嘘のように、雪が消えてくれた。歩けるようになれば、次の雪が降る前に出かけなきゃ。
平場に雪が無くても、山は車で入れないほど積もっていた。少しくらいの雪なら、長靴はいてズボズボと歩けるんだからと、ミゾレ降る風の強い日に、カメラかついで山の中に入った。
 葉が落ち、見るも寒々とした雑木林とにらめっこしていると白い雪の上で何かが動いた。「ん?」。正体が判らないままジッと見つめていたら、またピコピコと動いた。「きゃぁー、可愛い!」。10b程先の杉の倒木にミソサザイがいた。
尾をピンと反らせた姿はカワガラスにとても似ている。杉の葉の中を動き回っている。「お願い、出てきて」声に出せない願いをしてみたら、聞こえたらしい。杉の枝にチョコンと乗ってくれた。「うんうん、君は良い子だね」。□
 今年もあとわずかとなりました。また豪雪になるのだけはいやですね。まだちょっと早いですが、今年1年間に感謝し、来年もよろしくお願いいたします。
2006/12/18

風を待つ「ススキの花」

例年に無く山々の紅葉が美しかった。中でもモミジの真紅とナラの黄色の美しさは、山へ入る度に一人で感嘆の声をあげていた。
 原っぱには嫌われ者のススキが風に吹かれている。この態度のデカさに困っている方が居るはずだから、大きな声で言えないな。だけど、私はススキの風情ある雰囲気が好き。
 私は時々、カメラに虫眼鏡を付けて撮影することがある。そこに、肉眼では気が付くことの無い神秘の世界を見ることが出来るから。今回はその虫眼鏡で、ススキを覗いて見る。心の中で叫んだ「すごい!」。思った通りススキの可憐で繊細な花の美しさを見ることが出来た。
 白銀色に輝く花びら(?)の一本一本が風に揺れ「さわさわさわ」と、しなう。これだけの美しさを持っていながら、嫌われるのはその繁殖力からだと思う。今にも風に飛ばんとしている花からは、すでに根か芽となるべく長いものが出ている。新地に根を下ろし、そこで生まれ変わるのだろう。
2007/12/8
「ハバヤマボクチ」の綿毛

秋晴れが続くと、暖かさに比例して野山も枯葉が敷かれ始める。木々に葉が少なくなってきたから今まで目に入らなかったものが見えてくる。その中にとても可愛いものを見つけた。普段から感激屋の私だからこの不思議で何とも表現の難しい可愛らしさを見つけた時は大感激。冗談じゃなく野ウサギの尻尾が抜けたのかと思った。
 そう、色はまるで野ウサギの毛、そして大きなミカンくらいで真ん丸。見た限りだと、とても柔らかそうに見える。実際に触ってみたら、毛ほどではないにしても指先に心地よい柔らかいものだった。よ〜く見ると長い幹に付いている。幹をたどってみると葉が見えた。ハバヤマボクチかな?
 ハバヤマボクチはツボミの時も可愛い真ん丸で見つけると嬉しかったっけ。だけど、綿毛まで可愛いなんて知らなかったなぁ。「ねぇ、もうすぐ木枯らしが吹くから、しっかり風に乗ってよ。あっ、田圃や畑にまで飛んでっちゃ駄目だからね」…。
2006/11/28
前に戻る 過去記事へ