一個だけ残った「ドングリ」

山に入ると落ち葉の上を歩く季節になった。黄色や茶色に色を変えた落ち葉を踏みしめながら、その「シャクシャク」と聞こえる足音を楽しむのが好き。秋を楽しむ気分の時、周囲を見渡す私の眼は植物を見る眼へと変わる。そんな時も耳だけは生き物の声を聞くために地獄の耳になっていたはず…だった。
ところが、「キョッキョッ」と、キツツキの気配がするけど、姿を探そうとは思わなかった。何故って?それはね、とても愛らしいドングリに釘付けになってしまっていたから。
一個だけ残った小さなドングリは、夕日を受けて浮んでいた。その可愛らしさにその場を動けず、ただただ見つめていたら、ドングリの声が聞こえてきた。「私の最後の輝きを見て欲しい」。お気に入りの山道、ドングリはいつも私を見ていてくれたと思う。山の恵となる前に、自分に気付いて欲しくって私を呼んだに違いない。
2006/11/8
秋晴れに出あった「ノスリ」

長雨で山散策が出来ない日が数日続き、私は少し元気が出なかった。山の友は何をしてるのかと、気がかりだった(山で出会うもの全てが友だと思っているから良いのよ)。
待ちに待った秋晴れ!残念ながら仕事が入っていて夕方にならないと、出かけられない。だけど、秋晴れを待っていたのは山の友も同じ。こんな時は何かが必ず姿を見せてくれるはず。で、あれよあれよと日が傾くのを背中に受けて出会ったのはノスリ。
高い杉のテッペンで獲物を探している。山の鳥は人に慣れていないから姿を見られたら逃げられてしまう。遠く杉の葉の間から見るノスリは鷹の鋭さが見られない可愛い顔をしていた。ネズミでも見つけたら形相が(鳥相か)変わるんだろうなぁ。
何枚か撮ったら、もっと大きく撮りたいと欲が出た。そお〜っと一歩、そお〜っと二歩…、げっ居ないじゃない!
2006/10/18
サラシナショウマにモリアオガエル

一面緑の山の中にサラシナショウマが咲いていた。真っ白で、とても小さな花が集まり花房の長さが4・50aにもなる花。たわわに咲いた自らの花の重みで、上を向いて立っていられないって事はその花の豪華さから理解できる。
だけどなんか変。「えぇっ!あはは、可愛い〜!」山々へ木霊のように私の声が響いたはずだ。だってね、豪華な花に誘われたのは私だけじゃなかったのよ。モリアオガエルがピタッとしがみ付いて昼寝の真っ最中、しかも、私が近づいたって全く気付かず爆睡状態。花見をしていて、そのサラシナショウマの美しさに「花に埋もれて眠りたい」って思ったんだよね。
嬉しいな、頭を垂れたサラシナショウマには気の毒だけど、モリアオガエルは、その場所が汚れの無い美しい自然を保っている事を私に教えてくれた。それにしても、可愛いけど見ているだけで疲れてしまいそうな寝姿。しがみ付いて寝られるモリアオガエルもベッドを提供しているサラシナショウマも、すごい力持ちだこと。
2006/10/8
ぬいぐるみのような「カイツブリ」

水鳥の仲間の中では、体が小さな方から数えて5本の指に入るんじゃないかと思えるカイツブリを、数年前に妻有大橋の下で見つけていた。
 昨年、そのカイツブリを山の中に作られた人工池で見つけてから、今年も雪どけを待って見続けている。6月初めに2羽のヒナを確認してからは、上空を飛ぶカラスや猛禽の襲撃を心配していた。
 私の心配を何処吹く風に、8月にはヒナが4羽に増えていた。その可愛かった事、まるで縫いぐるみを池に浮かべたみたいだった。池に潜ったカイツブリ餌を銜え、水面に顔を出すと4羽が一斉に「ピピピピピピ」と鳴きながら親カイツブリのもとへと泳ぎだす可愛い様子を見てきた。そして、最近になって、ヒナが自分で潜って餌をとれるようになった。
 お腹をすかし、餌を催促する可愛らしい鳴き声も殆ど聞くことが出来なくなり少し寂しい気もするけど、4羽が無事に成長している姿を見られる事が嬉しい。数年前には姿さえも見ることが無かったカイツブリは確実に繁殖している。
 手のひらに乗るほど小さなカイツブリ、カラスになんか負けないでよ〜。
2006/6/28
「アスパラのようなオニノヤガラ」

私は撮影でよく雑木林の中に入る。この日もブナや
ナラの木の生える林に入って成長した植物を見ていた。
 朝日が木漏れ日となって林に降り注いだ時、日を浴びて浮かび上がる一本の植物。前に見つけた時は、「白アスパラが何でこんな所に?」と、一瞬考えてしまったほど、すっくと伸びた「アスパラ」に似ていた。
 家に帰り、図鑑を調べて、その不思議な植物の名前を知った。そろそろ花が咲いたかな?と改めて雑木林に出向いてみると咲いていた、咲いていた。緑一面の中で、場違いのような姿を
見せるのは「オニノヤガラ」。しばらく見ているうちに、葉緑素を持たないこの地味な花は、誰かに見つけて欲しくって背丈を1mにも伸ばしているのかも知れないと思った。
 「大丈夫。私が代わりに、あなたの花盛りを皆さんに見てもらうからね」。
2006/9/8
「オオタカ」

新緑が眩しい頃にオオタカの巣を見つけてから、3羽のヒナを見守ってきた。その3羽が無事に巣を離れ、私からヒナが離れてから1ヶ月余過ぎた。
 その後、機会があるとオオタカの行動範囲で耳を澄ました。オオタカは巣立ちをしても、しばらく巣の周辺で生活するから気配だけは、簡単に感じる事が出来ていた。そして、その都度に大きな鳴き声と、元気に大空を飛ぶ姿を確認していた。
 確認はしていたけど、いつか成長したヒナを撮りたいと思っていた。もわもわ産毛の可愛いヒナの時から見守り続けてきたからだと思うけど、私は、しっかり母親の心になって待ち続けた。
 ある日、いつもの様に、いつもの所で待っていた時だった。「ピーッ」聞き慣れた鳴き声が聞こえてきたと思ったら、大きく翼を広げたヒナが近づいてきて、そのまま目の前の鉄塔に止まった。
 鉄塔から私を見下ろしたオオタカは、前に、巣の下でうろうろしていた変なものがまた居た。と、懐かしんでくれるかのようにジッとしている。ファインダー越しに目が合った時、オオタカが私に言った。
「母の心じゃなくて、婆の心じゃない?」。フン、何とでも言いなさい。
2006/8/19
「イチモンジセセリ」

「イチモンジセセリ」。一度刈られたハルジオンが、新たに花を咲かせているところを見つけた。
 嬉しそうに咲く花を見ていると、今度はハルジオンより更に嬉しそうに花から花へ飛び交う、つぶらな瞳の「イチモンジセセリ」を見つけた。
 落ち着きなく飛び回るイチモンジセセリも、ご飯の時は行儀が良いところがとても愉快だ。小さくてとっても素早いから、可愛い顔してるってことを知らない人が多のは、本当に勿体無いよね。
2006/8/8
「サシバ」

夏鳥の「サシバ」は子育てのために渡ってくる。姿を見る時は、たいがい杉木のテッペンに居る。一歩でも近づくとすぐに飛び立ってしまい、近くに営巣しているのは間違いない、と思っても見つけることが出来ないでいた。
 ところが炎天下、林の中をウロウロしている私に同情して(いいの、いいの)とうとうサシバ雛の方から出てきてくれた。カメラに向かい、しばしポーズを決めてから雛は元気に飛び立った。「元気で大きくなってね〜、来年も会おうね〜」
2006/7/28
「イタドリ」

妻有では、「イタドリ」と言うより「スカンポ」と言った方が馴染みかな。大きく育ったイタドリが今盛んに花を咲かせている。
 子供の頃、生えてすぐの柔らかい軸の皮をむいて食べていたあのほろ酸っぱいイタドリに、小さくて可愛い花が咲くことを私は数年前まで知らなかった。
 中平の澄み切った青い空に白く可愛い花を包み込ませて咲いているのを見つけた。まるで、自由を宣言したかのように堂々と咲くイタドリの花に、とっても青い空が似合っていたっけ。
2006/7/18
「カワガラス」

 川の中に住む虫などを餌としていて、市街地周辺で見ることは出来ない。でもね、山の中が好きな私は、松之山の山に流れる小さな川で見つけましたよ。
 早朝、カメラを持って出かけた私を待っていてくれたかのように、カワガラスは堰の上でチョコンとおすましポーズ。
 真ん丸ふっくらがとっても可愛いくて、私はたぶん1人ニヤニヤしていたんじゃないかなぁ。「え、待っていたんじゃない?寝ぼけていただけ?そんなぁ〜」。

2006/7/8
「アサギマダラ」

 渡りをする蝶として有名な、大型でとてもきれいな模様の蝶がいることは知っていたし、機会があれば出遇いたいものとも思っていた。ただ、この妻有で見ることは出来ないだろうなとあきらめていた。
 それが、遇えた!遇えた!撮影時はいつも1人の私だけど、この日は遠方からの自然大好き仲間を2人乗せていた。
 松之山の山の中を車で走っていて道路脇に咲き続いてるマーガレットの花を横目に見ながら撮ろうかどうしようか考えていたその時、「アサギマダラがいた!」後ろに乗っていた友の声に疑いながらも車を止めた。
 友の指差す方向には、紛れも無いアサギマダラが優雅に飛んでいた。慌てて3人カメラを手に車から降りた。初めて見るアサギマダラは、想像以上。紫がかった翅と白・赤の模様のバランスが見事、こんなに美しい姿なら人気があるのも理解できるわぁと、大感激の私だった。

2006/6/28
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