線香花火「シシウド」

 これでもかと言わんばかりの暑さ続き、暑さから逃れて家に引きこもっている間にも山の植物達はこの暑さを我が物とし美しい花を咲かせているのが気がかり。だけど、さすがに山に向かう気力も出ず家の中で愛猫と共にグターと過ごす日が多くなった。

 それでも、時期になると毎年必ず撮影する花がある。シシウドの花、ヒマワリに負けず劣らず暑さが似合う花の1つだと思う。市街地からほんの少し山に向かって走るだけで見ることが出来るシシウドの花。背丈が大きくて、その上背丈に負けないほど大きな大輪の花を咲かせる。正確には、花の一つ一つはとっても可愛らしい小さな花だけど、大きく太い幹の枝分かれした先にまるで線香花火を見るような繊細な美しさで咲くシシウドの小さな花。

あ〜ぁ、今年も撮っちゃった。2010/8/8付

穴から出た「アナグマ」

雑木の中で小鳥達の鳴く声を堪能し、道路に出たところで目の前に居る何かと目があった。熊の目撃情報が出た地域でも有り一瞬バクンッと心臓が踊ったのは情けなかったけど、相手が黒くも無く、大きくもなかったことで気持ちが落ち着いたらしく、すぐに思考回路が動き出した。同じ様に驚いている様子で私を見ていたのは通称「ムジナ」と呼ばれているアナグマ。

恐がらせないよう、スローモードで肩に担いだ三脚を下ろしカメラをセット。とは言ってもほんの数秒の作業、嬉しいことにアナグマは作業を完了するまでジッと待っていてくれた。いや、アナグマからしたら“待っていた”のではなくて“動けなかった”という心境だったと思うけど、勝手に解釈すると“待っていてくれた”と言うことになる。

ファインダー越しで見るアナグマの毛は実に柔らかそうで優しい。逆に黒い模様の中で光る小さな目は、その優しい姿とは対照的に野生の鋭さが伝わってくる。そういえばパンダも黒い模様の中の目は鋭い。誰からも愛されているパンダ、畑を荒らすと嫌われているアナグマ、う〜ん。2010/8/28

羽根つき「ツクバネソウ」

7月にもなって羽根つきの話題もちょっと変だけど、雑木林の中を歩いていて見つけたツクバネソウ。輪になって大きく開いた葉の上に、まるで羽根つきに使う羽根の様な花が咲く。私自身は羽根つきなんて遥か昔に何度か遊んだ記憶があるだけで、実際には死語に近い羽根つき。それでもお正月の言葉から連想すると、まるで代名詞のように羽根つきが思い浮かぶもんだから面白い。

雑木の間から僅かに射した日の光に浮かび上がった大きな葉と、ツンツンと上を向いたシベが可愛い小さな花を見つけた時には、瞬間にその名の由来通りに羽根つきの羽根を思い浮かべることが出来た。なるほど「突く羽根草」だわ。

山の植物のほとんどは、人の目に触れないところでひっそりと葉を広げ、花を咲かせている。ツクバネソウもその1つ、大きな葉に似合わぬほど小さな花。その出しゃばらないところが如何にも山の花だと感じる。

う〜ん、どこか私と似ている・・・ぞ。2010/7/18付

やんちゃ「子ギツネ」

お気に入りの尾根道が通れる。待ちに待ったものだから風が強くても雨降りでも気にしない。雨合羽を車に積んで山へと上っていく。中腹を過ぎた辺りで道端に何かが居ることに気付いた。キツネだ!

静かに車を止めたけど藪の中へ入ってキツネの姿はもう無い。微かな期待をして車から降り雨合羽を着こみ姿の消えた藪の中を見渡しながらジッと待つ。遠く雑木の葉の下にもこもこと動くものが見えた。キツネが撮れるチャンスを逃したくない。

カメラを取り出すついでに持ってきたパンも一緒に取り出した。ひょっとしたら食べてくれるかも知れない。撮影出来そうな距離にパンを千切って投げて声をかけた。「ほーっ、ほーっ、御飯よぉ」。うっそぉ、雑木の中をもこもことパンに釣られて来たじゃない。あれ?子ギツネだ。それも3匹もいる。取り合いながら目の前で美味しそうにパンを頬張っている。きっと、後でママに叱られたね。

「知らない人から物を貰っちゃいけません!」。2010/6/8付

「アズマヒキガエル」春うらら

本当に豪雪の年だったとつくづく思い知らされる。5月も半ばなのに未だお気に入りの尾根道が残雪ありで通れない。もうちょっとなんだけどタイヤ交換してしまったから無理が出来ない。雪解けの遅さは平場の日陰にも言えて、我が家の猫の額よりも狭い田圃もようやく車で行けるようになった。田圃への道普請を終えた主が帰るなり興味あることを教えてくれた。「道に流れて出来た水溜りで何匹ものカエルが産卵している」と。

勿論、そんな情報が入ったら確認せずにはいられない私。カエルの特徴や卵の形状を聞き「ヒキガエル」だと確信、まだ居てくれることを願い小雨降る翌日に向った。耳を澄ませながら現場に近付くと聞こえてきたヴァォヴァォ。

うわぁ居る、居る。あっちにもこっちにも溝の中にも大きなカエルが恋の季節を迎えていた。車が通ったら踏み潰されてしまうに違いない細い道幅いっぱいに卵も産まれている。今までこの場所で見たことが無かったヒキガエル。これも豪雪の仕業かな。どうか卵が孵るまで水溜りが残っていてくれますように。

2010/5/18付

お目覚め「エンレイソウ」

5月に入っても山の雪は消えず、調子に乗って車を走らせていると目の前がいきなり雪道となり蛇行した細く長い下り道をバックで下りる事になる。片側に谷を見ながらのその緊張感は背筋がむずむずしてくる。それでも懲りずに時間があれば山へ向かう。ほんの数日で、目に入るもの、耳に聞こえてくるものが違っているから特にこの時期は面白い。

春に咲く山の花は、小さくて見るからに繊細なイメージのものが多い。その中でエンレイソウは少し浮いている存在のようだ。湿った場所に多く、柔らかそうで大きな葉はまるで美味しく食べられる山菜の様、その大きな葉の真ん中にとっても地味な花が咲く。

春の日を浴びたエンレイソウの小群生を見ていて今までと違った印象を受けた。どことなく暗い花だと思っていたけど、意外に明るい花なのかも知れないなぁと。そう感じるほど此処のエンレイソウは楽しそうに笑っていた。今まで見てきたエンレイソウはみんな寝惚けていたみたい。

あれ、寝惚けていたのは私?2010/5/8付

魅せられた「マガモ」

JRの貯水池や雪解け水が加わって更に水量が増えた信濃川で見るカモ達は、とんでもなく遠くて誰が誰やら視力が衰え始めた私の肉眼では確認できずカメラのレンズを通して見ても種が判る程度でしかなくその上、当然のことながら遠ざかることはあっても決して近づいてはくれない。そんな時、頭をかすめることは「公園の小さな池だったらもっと・・・」だ。通っているお気に入りの池だって貯水池ほどじゃないけど十分に広くて、池で遊ぶカモ達を見つけて撮影しても本当の美しさとは言いがたい姿のものしか撮れていない。

ところが、芽吹きがまだ始まっていない池の土手、雑木の下に鮮やかに光る緑色を見つけた。一瞬で「マガモ」と感じたその緑色は日に当たり輝いている。たとえ遠くからでも美しさは見えた。いつも通り、少し近付いただけで遠ざかられてしまったけどマガモは大きい。その大きさが幸いして輝くマガモの金属色の姿が撮れた。

こんなに美しいんだもの、お嫁さんすぐ出来るね。2010/4/28付

すっごい美男「ルリビタキ」

雪消えを待って山へ行こうと考えていても、結局は待ちきれず残雪の上を歩くことになる。飲み物とオヤツを入れたリュックを背負い三脚を抱えて雪道を歩くのは難儀なことだけど、途中ところどころに日当たりの良い土の表れた場所を見つけ一休みを兼ねた春探しの楽しさは最高。

山桜の蕾が確認出来るようになっていたり、雪椿の濃緑の葉の中に今咲かんばかりの真っ赤な蕾を見つけたりした時なんかは本当に幸せ。豪雪地ならではの感激を味わえる。感激に浸りながら、日が当たって全体が黄金色に染まったような土手の端から端を見渡している時、藪の中にチョンツクチョンツクと動く鳥が僅かに見えた。

こんな時は、落ち着きの無いその鳥との根気比べとなる。動き回る鳥とは逆に息を殺しひたすら相手が姿を見せてくれるのを待つ。待っているのもまた楽しい。だって、出て来てくれた時の胸の高鳴りは恋する乙女になれるから。

うわぁ、綺麗!日に当たったルリビタキの羽の瑠璃色が輝いて見えた。2010/4/18付

初めまして「ハイタカ」

すぐそこまで来ていた春がどこかで道草を食っているようで寒い日が続く。ちょっとだけ暖かい思いをした体はすでに春用に変化したらしく室温は確実に上がっているのに重ね着しても温まらない日の辛いこと、指先が真冬のように真っ赤になる。この時期は家の中よりも断然外の方が暖かく感じる。こんな日は寒さから抜け出す意味も含めて山に向かって出かけてみる。

尾根道はついこの前まで雪の壁が出来ていて周囲を見渡せない状態だった。3月半ば過ぎともなるとさすがに壁の高さが半分に減っていてぐるりと見渡せる。こうなると冷たい風が頬を撫でても気にならないから不思議なものだ。

灰色の空に鷹が飛んでいるのが見えた。目で追って遠く杉の木のテッペンに止るのを確認、でも後姿。手前の杉林に隠れながらシャッターを切る。ほらね、案の定振り向いた。久しぶりにオオタカに会えたと喜んでいたらその後、鳥見の大先輩から「ハイタカ」だと教えてもらった。

ほぉ、オオタカそっくり。初めまして、これからもよろしく。4/8付

憩う「キンクロハジロ」

今冬の土堰堤は降り積もった雪で水面が覆われてしまいまるで雪原状態だった。広野に積もった雪を見ている様でそれはそれで美しかったけど、例年来ているはずの水鳥達の姿が見えないのは悲しかった。

私の行動範囲で水鳥を探せるのは信濃川だけ。度堰堤に飛来する予定だった水鳥達のほとんどは信濃川で過ごしている。でも、水量が増え川幅が広くなった信濃川で確認するのは至難の技。大河で豆粒を探すようなもの。辛うじて正体が判っても撮影することは無理だった。

午後からぐっと気温が上がった日、山の様子を見るため出掛けたついでに遠回りして土堰堤に寄った。貯水池の半分ほどが水面を出している。期待しなかった分だけ嬉しさ倍増。逸る気持ちで車を止めた。

居る!水面に積もった雪の上に、ぽつん、ぽつんと黒い姿が見える。遠くても構わない、会えただけで良い。眺めながら池の端を歩き始めたら足元からキンクロハジロの仲良し達が滑り出てきた。

あっ、邪魔しちゃった?ごめんなさい。2010/3/18付


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