出た!「アキノギンリョウソウ」

出た!なんて大げさなタイトルを付けてしまった。何のことはない、アキノギンリョウソウの別名は「ユウレイタケ」。色素をもたず全体が透きとおった風に見える色白美人。雑木林の腐葉土に生え滅多に人の目に触れることも無い日蔭花、それゆえに儚さも感じられる。運良く見つけた時は嬉しくて、いつもは1人言さえ発していなつもりの私でも静まり返った雑木林の中で1人歓声を上げたりする(リスやウサギがビックリしただろうな)。

反面、見つけてもカメラが鳥撮り用しかもっていない運の悪い時もある。だけど今を逃したらアキノギンリョウソウが終わってしまう。次はいつ出合えるかどうかも分からない。そんな時はたとえどんなに遠くに車を止めていてもカメラを取りに急斜面の腐葉土の上をふかふか歩いて車まで戻る。

はら、カメラを取りに行って良かった。もう花が終わりかけている。それにしても透きとおった肌がうらめしい。違う、うらやましい。2009/9/8付

幾何学模様の「キンモンガ」

野花と戯れるキンモンガ、その姿を見るたび思う。黒地に黄色の直線的模様がキリッとしたその翅はまるで幾何学模様だって。

ほんの少し小柄な可愛い蝶・・・と言いたいけどキンモンガは蛾の仲間として区別されている。一般に蛾と聞くと、夜街灯に集まってひらひら翅の鱗粉を撒き散らしながら飛びまわる。そんなイメージが強くて、私自身も本格的に写真を始めるまでは蛾は苦手だった。間近でしげしげと見つめたことも無かったし、色の綺麗な翅を持っているものはみんな蝶だと思っていた。それまでは、蝶は触れるけど蛾は触れることは勿論、じっくり見ることも出来ない私だった。だからキンモンガも蝶だとばっかり思っていて、蛾だと知ったときは本当に驚いた。そして目が覚めたように蛾が苦手じゃなくなった。

それからは、見つける蛾がみんな美しい翅模様を持っている事に気付き、今では蝶よりも蛾の美しい翅を見ることの方が楽しみになっている。この発見は大きいことだ。キンモンガのお陰だとつくづく感謝している。まだ触れないままだけど、ね。2009/8/28付

「クサギ」花盛り

近くに居るとホワ〜ンと漂ってくるクサギの花の香り、山百合の花が群生して咲いているようなこの花の香りは決して嫌いじゃない。葉を千切って嗅いでみると一般的に青臭い葉が多い木の中では確かにキツイ感じがするけど、ちょっと気の毒な名前。

クサギが咲くと思いだす。数年前、山百合だと思って探し辿り着いたら、目の前に初めて見るクサギの花が満開になって現われた感激。2mほどの高さの木が花の重さでしなっているんじゃないかと思えるほど見事な数で咲いていた。紅色の可愛らしいガクから飛び出して咲く花の様子がすっごく魅力的だった。

花の咲く木は沢山あるけど、私には花が咲いていない状態だとなかなか覚えることが出来ない。花が咲いて初めて「ここにもあった」となる。中でもクサギだけは場所も覚えていたいと思う。春に若葉を食べてみたいし、秋には藍色の実を集めて草木染めもしてみたいし。2009/8/18付

無事に育った「ヤマドリ」

6月18日付けの記事に載せたヤマドリの抱卵中。その後見に行った時にはもう抱卵していたヤマドリの姿は無く卵の殻だけが散乱していた。

クラクラするほど暑い日、山道を車で進んでいる先でヤマドリが道下に降りたのを確認した。車の気配を察し隠れたようだ。車を止め、「残念だったなぁ」。なんて思いながらヤマドリの居た辺りに目を向けてみたら真ん中で休んでいるヤマドリが2羽見えた。土手に生えている雑木の影が山道に日陰作っている、その日陰で涼んでいる。日頃生活している雑木の中もさすがに暑くて耐えられなかったのだろう。

私の姿が見えているはずなのにキョロキョロするだけで逃げない。警戒心の薄さ、間違いなく涼んでいるのは今年巣立った幼鳥。うっそぉ!シャッター音で次々に幼鳥が飛び出し親鳥の後を追った。この場所と抱卵中のヤマドリを見た場所といくらも離れていない。あぁ、良かった。4羽が無事に育っている。2009/8/8付

お日様の下で抱卵「ヨタカ」

私の連載を読んで下さっているというNさんから電話を頂いた。「自分のスギ林に卵を抱いているらしい鳥が居る」と。見つけた時の様子や卵の数、飛び立った鳥の姿を伺って私の頭の中にヨタカが浮かんだ。ヨタカ(夜鷹)は名前の通り夜行動する鷹、そして夏鳥。いつでも見られる鳥じゃない、ましてや昼間は木の枝と一体化したかのように林の中でジッとしている鳥。そのヨタカが抱卵中って?え?

ヨタカが見られる!雛が孵る前に行かなくちゃ。いつから抱卵しているのだろう。のんびり向かう余裕がない。都合のつく日を考えるとチャンスは1日、この日を逃したら次が無い。あぁ、どうか雨降りとなりませんように。電話で伺った場所を頭の中に叩き込んで翌日の晴れを祈った。

祈りが通じたのか、行いが良かったのか、翌日は見事に晴れた。抱卵中を長い時間邪魔することは出来ない一発勝負だ。持ち物を念入りに点検し出かけた。間違いない。炎天下、卵を守りジッと日照りに耐えている石ころの様なヨタカが居た。2009/7/8付

親の目「ヤマドリ」

町中・山中の春が満腹状態、どこを向いても緑一色花いっぱい。目で楽しむ春も良いけど、耳で楽しむ春も良い。カエルの合唱を聞きながら小鳥のさえずりを聞く。そこにいるのは自分だけという贅沢な時間を過ごせる有難さ。

そんな幸せな時を過ごしていながらも欲は出る。ちょっと遠くを見ればピョンピョンッと見えてくるワラビの頭。綺麗な緑のワラビを見れば誰だって採らずにいられないでしょ?と、耳だけは小鳥のさえずりを聞きながら目はワラビを追う…つもりがいつの間にか夢中になってワラビ採りをすることとなる。

草むらの中にすっくと頭を出したワラビを見つけ近づき屈み込んで卵があるのに気付いた。鳥の卵に間違いないけど親鳥がいない。これは次の機会に親鳥を確認しなくちゃ。そして後日、草の隙間から私と目が会った卵を抱くヤマドリを確認できた。

私が近付く足音を聞きながらドキドキして卵を抱いていたのよね。あぁ、ヤマドリの愛。2009/6/18付

マイペースな「コブシ」

今春、私が入る山では春の花が一斉に咲いた。順番に楽しむ予定のマンサクもヤマザクラも雪椿もほぼ同時の開花をした。山桜、雪椿などは半月以上も早い開花をした。愛らしいピンクのニリンソウも例年だったらこれからが本番のはずなのにすでに散ってしまった。小雪だったことと3月とは思えない暖かい日が続いたことから早起きしてしまったようだ。

早々と咲く花〃に感激と驚きを受けながら気にかかったことがあった。早起きが得意な「コブシ」の花がまったく咲いていない。一時の私の口癖が「コブシが咲いていない」となってしまったほど気になっていた。

そのコブシが劇的な開花をした。確かに1つの花さえ咲かせていなかった。ところが翌日には山の木々の間そこかしこで真っ白な花が見えた。満を持して一斉に咲いたコブシの花・花・花で山々が明るく輝いていた。

あなたは陽気に左右されない「我が道をいく」タイプなのね。2009/5/9付

やっぱり「キジ」は美しい

散策していると枯草の中からいきなりキジが飛び出すことがある。キジは驚いて飛び出しているわけだから、無造作に歩いて驚かした私の方が絶対悪い。

だけど、驚かされているのは私も同じ。何気なく歩いている時に足元から大きな声で鳴きながら大きな体が飛び出すのは決して慣れるものじゃない。一瞬息が止まり心臓もバックンと音を立て大きく脈打つ。キジはバタつきながら数歩の助走をして飛び立つこともあるし、猛スピードで走りだし藪の中へ消えることもある。どちらにしても、大きな体をしている分だけ飛ぶのは苦手のようで、決してカッコ良くはない。不格好に飛びながら不格好を助けるがごとくに鳴き声は大きくけたたましい。大きな体、大きな声、目立ちそうなものだけど、じっと動かないでいると藪に紛れ込んで全く見えない。美しいキジの姿をシッカリと撮りたくても、探せないか、驚かされるかで、なかなか撮ることが出来なかった。

信じられないほど運の良い日がきた。車を止め、今日はどっちへ行こうか考えながら窓の外を見たらなんと、キジのオスが歩いている。バックン!あれ?こんな時も心臓が飛び上がるんだわ。2009/4/21付

眠気に勝てないアオサギ

前号で「ねぐらに戻ったダイサギ」を紹介した時、同じ杉の木にダイサギと一緒にアオサギが乗っていたことを書いた。で、今回は「ねぐらに戻ったアオサギ」ということになった。

アオサギもダイサギと同じで決して珍しい鳥じゃないけど、とにかく市内に飛ぶ鷺は警戒心が強くて遠目にしか見ることが出来ない。遠〜くでうろちょろしている変なものが目障りなだけで決して自分の美しい姿を見せてやろう、なんて考えてくれない。アオサギの羽色や模様は黒色がキッパリ入っていてカッコ良い。河原で寒風に耐えしのび首を竦めている姿は哀れなほどよれよれに見えるけど飛ぶ姿が日を受けると大きく広げた薄い藤色(私にはそう見える)の翼が優しくもあり勇ましくもある。

運良く出あった塒のアオサギ、さすがに眠気には勝てなかったようで普段じっくり見ることが出来ない顔をたっぷりと見せてくれた。あれぇ?よれよれしてるよ。どうしたの?2009/3/18付

ねぐらに戻ったダイサギ

先月、何度か朱鷺の美しい姿を楽しませてもらった。たとえ思いがけない出会いであっても、見慣れた朱鷺が市内からお隣の信州へ移動してしまったことはやっぱり寂しい。ほんのちょっと胸に風穴があいたような感じがしている。

市内でも朱鷺と同じ様に姿の美しい鷺が見られる。一般的には白鷺と呼んでいる全身の羽色が真っ白な鷺。白鷺には、コサギ・チュウサギ・ダイサギの3種がいて、市内の空を優雅に飛んでいるのは大概がダイサギ。卵の時から飼育されて育った朱鷺と違い、なかなか人に慣れない。人どころか遠くで車を止めても飛び立ってしまう。鷺の多さに閉口している土地の人が見たら「嘘でしょう?」と、言われるほどの警戒心を持っている。

日も落ちた時間帯、ダイサギが大きく翼を広げ飛んでいる。時間からして間違いなく塒に戻るはずと、眼で追う。なんと運が良いことに止めた車の真ん前の杉のテッペンに降りた。寝てしまったのか、どんなに根元をウロウロしていても逃げない。え?同じ木にアオサギも居る。あぁ、木登りが出来たらなぁ。2009/3/8付

遠慮はるばる「朱鷺」が来た

朱鷺の目撃情報を耳にした時驚いた。魚沼市での映像を見ながら「十日町に来るかも知れないね」なんて家族と話していたことが現実となり市内の雪の少ない田んぼで数日を過ごしている。

もうどこかに飛んで行ってしまったと思っていた私。まさか朱鷺がずっと市内に居るなんて考えてもいなかったものだから、この日はいつものようにカメラ担いでのんびりと飛び交う小鳥を眺めていた。その時、携帯電話がポケットの中で鳴った。「今、木に止まっている朱鷺をみんなで撮っているよ」。お世話になっている本紙記者さんからだ。えっ?そりゃ大変!

火事場のなんとやら、深く入っていた河川敷の中、それも30センチほどの雪の上をまるで土の上を走っているかのごとく全力疾走で車に戻る。飛ばないでよ、待っていてよ。願いながら向かう。

朱鷺が目の前にいた。やっぱり大きい。私を待っていたかのように飛び立つ寸前、広げた翼を見て朱鷺色がやっと理解できた。こんなに柔らかくて優しい色だったなんて。2009/2/18付


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